そして僕はヒーローになった
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発行者:小川輝晃
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ジャンル:エッセイ・日記

公開開始日:2010/11/24
最終更新日:---

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そして僕はヒーローになった 第1章 前置き
2人はホテルの屋上にいた。
宿泊客が利用出来るように開放されてたんだけど思ったより殺風景な屋上で、明日の為にストレッチなどしている他の学校の選手に紛れて、チープな天王寺あたりの夜景をバックに二つのシルエットが寄り添っているように見えた。
それからはもうなにがなんだか覚えてない。
次の日、練習の通りに走れば全国が見えていたはずの僕は「負けてたまるか」という不純な想いが胸に溢れたまま、不必要に意気込んで試合に臨んだ。
皮肉なことに僕らは同じ組だった。こんな悪戯があってよいものなのかと、あまり信じてもいない神様に毒づきたくなる。コースは忘れたけど小西は僕の前にいた。号砲が鳴り響き、一斉にスタートする。さすが小西は短距離の選手だけあってスタートダッシュが早かったけど、なんとか食らいついていく。
ヨンパーを走り始めた頃はなにも知らなかったからハードルとハードルの間を17歩で走ってた。全然早く走れなくて悩みながらいろいろ調べた末に、当時のオリンピックで神様と呼ばれていたモーゼスが13歩で走ってることを知ったんだ。
これは衝撃だった。
ハードルとハードルの間の距離は35m。そこを世界のトップはみな13歩で走る。一歩が約2.7m。まるで小学生の走り幅跳びだ。それを知ってから僕は、せめて自分は15歩に変えてやろうと練習を始めた。途端に見違えるように走りが変わり、やっと僕は勝てるようになった。
苦しんで見出したノウハウを伝授した小西のハードリングもほぼ一緒だ。僕が教えた走り方で2人は200mライン頃までハードルとハードルの間の15歩を同じリズムで走った。それが、小西の向こうに3000m障害の大障害が見える辺り、7台目のハードルであいつのジャンプの方が早くなった。
離されていく。
呼吸とリズムが崩れていく。
苦しい。
負けたくない。
「この競技を教えたのは僕なんだぞ。」
どんなに遠吠えても、小西の背中はどんどん遠退いていく。あんなに練習してきたのに。いつだってやれば出来たのに。
9台目、僕は15歩で走れなくなってた。突然失速し、ちょこちょこと無様に歩幅を狭めて17歩で飛び上がった。
もう、手は届かなかった。
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