父さんも母さんもアイシテル
第1章 父さんの想い
……
警察に失踪届を出して2日が経ったが、父さんは見つけられなかった。
最悪の状況しか思い浮かばない。
また困ったことに、母さんが何も食べなくなった。
父さんが作ったシチューを最後に、母さんは何も食べていない。僕も食欲がなかったが、僕まで倒れたら父さんを探すことだってできなくなる。
僕は、父さんを探しまわった。ただ闇雲に…。父さんの会社の人も探してくれているようだ。
…ただ、父さんは見つからない。携帯も電源が落とされたままのようだった。
そして…母さんは起き上がれなくなった。僕は病院に母さんを入院させた。
お医者さんに怒られた。だが怒ったお医者さんも母さんは困らせた。
点滴をさせないのである。無理やりしても、自分で引っこ抜いてしまう。
僕は泣きながら母さんに「父さんが帰ってきて母さんが死んでたら悲しむから」と説得したが、母さんは首を振るばかりで、言う事を聞いてくれなかった。
「もう父さんは死んでいるのよ。…母さんも行かなきゃ…」
うわごとのようにうつろな目でそう言いながら、僕の泣いている顔を手でなぜた。
「いやだ…母さんまで死んじゃいやだ…!お願い…僕を独りにしないでよ!!やっと…やっと幸せになれたのに…!」
僕がそう言うと、母さんは僕を痩せた胸に抱きしめてくれた。
「愛してる…母さん…」
「私もよ良介…」
「だったら…お医者さんの言う事聞いて…。お願いだから…」
「…だめよ…父さんがまたご飯作ってくれるまで…母さん…何も食べられない…」
僕は泣くことしかできなかった。
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