父さんも母さんもアイシテル
第1章 父さんの想い
封筒だった。「良介へ」と書いてある。
僕は驚いて封筒を開き、中の紙を取り出した。
母さんが僕の傍まで来ていた。
紙は2枚あり、1枚は離婚届だった。父さんのところだけサインと判がある。
「!!…父さん…まさか…」
僕はもう1枚の紙を開いた。その紙にはこう書いてあった。
……
良介。元々良介を養子にしたのは、お前に母さんの夫になって欲しかったからなんだ。
私は子どもを作ることがもうできない。それは若い母さんにとても申し訳ないことだと、手術の後からずっと思っていた。
それで、若くて元気な青年を養子にすることを思いついた。
母さんが気に入ってくれれば、自然に子どももできるだろうってね。
子どもができる前に、先に父さんと母さんの離婚届を出して欲しい。そして、お前と母さんで婚姻届を出しなさい。
ややこしいことになってしまって申し訳ない。
でも…まともにお母さんに言っても聞いてもらえないだろうから…こうすることにしたんだ。
母さんも良介も愛してるよ。ずっと父さんはお前たちの事を愛し続けているからね。
父さんより。
……
母さんがその場に座り込んで泣き出してしまった。僕も涙が止まらなかったが、泣いている場合じゃない。
父さんを見つけなければならない。
最悪、父さんは自殺をするつもりかもしれない。
「母さん…とにかくここにいて…!僕、警察に連絡して、僕が父さんを探してくるから。」
「母さんも行くわ…」
「だめだ!…父さんが気が変わって帰ってくるかもしれないだろ!?…ここにいて!何もしなくていいから、家にいて!」
母さんは泣きながらうなずいた。
「父さん、絶対に連れて帰るからっ!」
僕は携帯を持ち、警察に連絡しながら玄関を出た。
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