父さんも母さんもアイシテル
第8章 永遠にアイシテル・・・(最終話)
「もういいよ!遼介!」
その声に、貴志と絵美が両手を合わせたまま目を開くと、遼介がまたひしゃくに水を入れて持ち上げているのを、山添達が止めていた。
「だって…お兄ちゃん、暑そう…」
「大丈夫だよ。遼介だって、何回も頭から水をかけられたら、寒くなって風邪を引いちゃうだろう?」
「…そっか…」
遼介はそう言って、ひしゃくをバケツの中に戻した。
貴志と絵美は微笑み合って、遼介を見た。
「そうだ!…良介兄ちゃん「アイシテル」…だよね!」
遼介が突然そう言って振り返った。そして驚いた顔をした大人達を見上げて言った。
「昨日の夢でね、お兄ちゃんが僕に「愛してる」って言ったんだ。男同士では使わないんだよって言ったらお兄ちゃんが笑って、男同士でもいいんだよって。だから父さんと母さんにも言っていいんだよだって!」
それを聞いた絵美は嗚咽を漏らし、ハンカチで両目を覆って泣き出した。貴志がその絵美の肩を抱いた。
沢辺が背を向け目に手をやった。山添はその沢辺の肩に手を乗せ、唇を噛み必死に涙を堪えている。
「父さん、母さん、愛してるよ!」
遼介がそう言って、貴志の腰に抱きついた。貴志と絵美は、しゃがんで遼介を抱いて泣いた。
「父さん達も…遼介を…愛してるよ。」
貴志がやっとの思いで言った。
遼介の目に、良介が親指を立てて微笑んでいる姿が見えた。貴志達に抱きしめられたまま遼介も微笑んで、同じように親指を立てて見せた。
(終)
<あとがき>
悲しい終わり方にしてしまいましたが、どうでしたでしょうか?
最後の章にある「アルコールセンサー」という車の装備は本当にあります。(ただ「アルコールセンサー」という名前じゃなかったかと(^^;))
飲酒運転でひき逃げ等、死亡事故が増えています。この良介のような悲劇がこれ以上増えないように祈りたいと思います。
では、また新しいお話が始まりましたらお願いいたします(^^)
如月レイ
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