父さんも母さんもアイシテル
第3章 実の親が現れて・・・(1)
……
母さんと僕は一緒にシャワーを浴びた。そして服に着替えて、ダイニングに行った。
すると、父さんが厳しい表情で、電話をしていた。
「?」
僕と母さんは顔を見合わせた。
父さんは僕に気がつくと、はっとして「今、良介が来ましたので…」と言って、受話器を僕に差し出した。
「?…僕?…誰から?」
「お前の…施設からだ…。」
「!?…施設!?」
僕は受話器を耳に当てた。
父さんが厳しい表情でダイニングテーブルの椅子に座った。向かいに座っている母さんが父さんに「どうしたの?」と聞いている。
僕は施設の院長の言葉を聞いて、思わず声を上げた。
「!?…僕の実の親!?」
母さんが僕の方を見たのがわかった。父さんが下を向いている。
僕は「まさか…」と呟いた。
「…そんな…今さら…」
僕は声の震えが止まらなかった。
「20歳になったら…迎えにくるつもりだった…って…」
僕の誕生日(正しくは施設に捨てられていた日)は来週だ。
「それなら、どうして先に言っておいてくれなかったんですか!?知ってたら…」
僕はそれ以上言葉が出ずに、溢れる涙を拭った。
母さんの嗚咽が聞こえた。
父さんが椅子から立ち上がって母さんの隣に座り、母さんの背を撫でた。
「わかりました。とりあえずそちらに行きます。」
僕は受話器を置いた。
そして、父さんと母さんの顔を見ずに「行ってくる」といって、ダイニングを出た。
……
僕は部屋に入り、携帯と財布だけをポケットに入れて、玄関に向かった。
玄関には父さん達が先に立っていた。
「…すぐ…帰って来るから…」
僕は父さん達の方を見ずにそう言うと、父さんが「うん。」と言った。母さんが泣いているのがわかる。
僕は黙って玄関を出た。
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