あなたの仰せのとおりに…
第1章 馴れ初め
……
私は、無料でメールアドレスが作れる、よくある検索サイトでIDを作り登録した。
そして、プロフィールの欄に「パソコンインストラクターをしております。何かパソコンでわからないことがありましたら、メールを下さい。もちろん無料でお答えします。」と書いておいた。
寂しさを顔の見えない相手と、メールのやり取りで紛らわせられたらいい…と思ってはいたが、本当にメールが来るとは思ってもいなかった…。
ある日、検索サイトを開くと、メールのところに「新着メール」のランプがついていることに気付いた。
どうせ迷惑メールと言われるエッチなサイトへの勧誘や、出会い系サイトへの勧誘だろうと思いながら、私はメールボックスを開いてみた。
だが、そうではなかった。
ユーザー名は「shusuke」となっている。
「しゅすけ?しゅうすけかしら?」
私は苦笑しながら独り言を言って、メールを開いてみた。
『
突然のメール失礼いたします。
実は会社で表計算ソフトを使っているのですが、どうしても集計がうまくいかず困っています。
文章で表現するのは難しいので、よろしければ電話をもらえますか?
僕の電話番号は「090-xxxx-xxxx」です。18時以降は家にいますので、いつでもお電話下さい。そちらは非通知で構いません。電話料金はのちほどなんらかの形でお返しします。
明日までにお返事がなければ、あきらめます。よろしくお願い致します。
沢田秀介
』
「電話番号書くかー?普通…」
私は思わず呟いた。それだけ困っているということだろうか…。
たぶん「沢田秀介」というのも本名だろう。
しばらく悩んでいたが、ふとデジタル時計を見た。
「19時53分か…」
怖いような気もするが、非通知でもいいとあるし、電話してみるか…。そう思った。
「お困りのようだし…」
…なんて、言い訳を呟いたりしながら、まず携帯の設定を「非通知送信」にした。
そして、高鳴る心臓の音を感じながら、メールに書かれた電話番号をプッシュし受話ボタンを押す。
「…プルルッ…プルルッ…プツッ」
相手が出た!!
「もしもし」
渋い男性の声だった。
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