あなたの仰せのとおりに…
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発行者:如月玲
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:---

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あなたの仰せのとおりに… 第5章 忘れられなくて…
忘れたつもりだった。
だったのに電話がかかって来て、何か傷口が開いたような心の痛みを感じた。

……

あの電話番号を消したことが、そもそもの間違いだった。
携帯のアドレス帳に載っていない電話番号が表示されたので、生徒さんかも知れないと思い、受話ボタンを押してしまったのだ。

「もしもし?」

そう言うと「…よかった…」という、聞き覚えのある低い声がした。

「!!」

私は思わず携帯を耳から離したが「切らないで下さい!」という声に、再び携帯を耳に当ててしまった。

「…忘れられなくて…」
「…マリさんへの想いは断ち切れたって言ってたじゃない。」

私がそう言うと、

「マリじゃない!」

という動揺したような声が帰ってきた。

「忘れられないのは、由紀さんのことです。」
「私?」

今度は私が動揺した。

「あのね、秀介君。あなたは寂しいだけなの。別に私じゃなくてもいいはずよ。私を選ぶのは、一度知り合ったから、誘いやすいだけのことよ。」
「違います!本当に俺…」
「おばちゃんをからかわないの。それでなびくほど、こっちは馬鹿じゃないのよ!」
「からかっているわけじゃない!」

秀介君の声が震えている。

「本当に会いたいんです…。もう一度だけ会ってもらえませんか?」

そんな声出さないでよー…。おばちゃんの気持ちが揺らいじゃうじゃないの…。

「もう一度だけで終われるの?」
「……」
「どうなの?」
「…わかりません…」
「!…」

正直と言えば正直だけども…。君のためによくないから、こっちは心を鬼にして忘れようとしてるのに…そっちから、そんな風に言われると…仏が顔をだしちゃう…。

「わかった。とりあえず、次で終わりということにして会いましょう。」
「!!…ほんとに…?」
「またあのカラオケボックスに行くの?それともホテル行っちゃう?」

…今、すごい大胆なこと言いましたよ、私…。

「…ホテル…で…」
「待ち合わせは、前と同じでいい?」
「はい!」

結局そのまま、日時を約束してしまった。
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