真理の探求者
第2章 第一話 神
「さて、質疑応答も済ましたし、名残惜しいがお別れだ」
少し寂しそうな顔をするもすぐに笑顔に戻る。
そして立ち上がった彼に倣って俺も立ち上がると、彼が手を差し出してきた。
「楽しい時間をありがとう。願わくば、君が再び"此処"に辿り着かんことを」
そう言って握手を交わす。
ああ、きっとまた来よう。
その時は俺の前世の管理者にも会おう。そして、改めて礼を言おう。
「最後に一つ、聞いても?」
「どうぞ」
「あなたは、神なのですか?」
「人に手を差し伸べられない、という意味では世間一般が信仰する神とは違うかな」
成る程。ならば…
「ならば、やはり俺にとってあなたは神だ」
「…そうか。ならば、目指したまえ。君には資格がある」
「ええ、必ず。いつか、きっと」
再びしっかりと握手を交わし、
そして彼が横に退くと、俺の前方に石造りの観音開きの扉が現れた。
「さようなら。また逢う日まで」
それはどちらが口にした言葉なのか。
しかし少なくとも俺は、確信を持っていた。また、逢えると。
探求者は、神を目指す。
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