真理の探求者
第2章 第一話 神
「腹が膨れる訳では無いが、元々ここでは腹が空く事も無い。
単に味を楽しんでくれればいいさ」
そう言って彼は自分の前にあるティーカップを手に取り、
香りを楽しんだ後一口飲んだ。
状況が上手く掴めないが、恐らくここは彼のテリトリーである筈だし、
相手が穏便な話し合いを望んでいるようなのでそれに従う事にする。
紅茶を手に取り飲んでみると、そのあまりの美味しさに驚いた。
これでも飲み物、特に紅茶にはうるさいつもりだが、
ここまで美味しい紅茶は初めてだ。
「口に合ったようでよかった。ここでは望む限り最上の物が出せるからね。
これでも紅茶にはうるさいんだよ」
趣味が合うね。嬉しいよ。なんせここに"人"が来たのは初めてだからね。
そう話す彼の顔は本当に嬉しいようだった。
人の部分を強調したのが少し気になるが、まあそれは今はいいだろう。
とにかく聞きたい事は沢山ある。
混乱していた頭も紅茶のおかげか少し落ち着いた。
クッキーに手を伸ばし頬張ってみると、
上品な甘さとチョコのほろ苦さが紅茶に良く合う。
なるほど、これ程美味しい物は初めてだ。
などと感心しつつ、疑問を速やかに質問へと纏める。
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