果てしなく長い物語
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発行者:岩上智一郎
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ジャンル:ノンフィクション
シリーズ:一章 幼少編

公開開始日:2010/09/27
最終更新日:2010/10/29 01:47

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果てしなく長い物語 第1章 果てしなく長い物語 一章 幼少編
 ゴトッ……。

 上から物音が聞こえた。
 思わず見上げてしまう。


 俺にはもう何もない。
 死ぬのはいい。

 しかし、ここでこんな死に方をしたら、残された者がいい迷惑だろう。

 馬鹿な…、死ぬのにそんな事をいちいち気にしてどうする?
 つまらない事など気にするな。



 包丁の柄を持つ右手に力が入る。

 目を閉じると、頭の中で幼き時代の風景が蘇ってくる。




 これが走馬灯というやつか?




 木造の二階建て映画館のホームラン……。
 お寺の敷地内にあるゲームセンター……。
 駐車場で開催されたスーパーカーの展示会……。
 古い作りのデパート……。
 隣の定食屋『よしむ』……。






 何を俺は懐かしさなど感じている?

 目からこぼれる涙。
 何故、俺は泣いているんだ。


 もう生きているのさえ辛いんだろうが……。

 それでも包丁を手首に押し当てたまま、いつまで経っても引けない自分がいた。




 死ぬのはいつでもできる。

 嘘だ。
 何もないこんな状態になってさえ、俺はまだ生に執着している……。



 今一度、ここで過去を思い出し、自分自身を振り返る事が必要な気がした。






 包丁を元に戻す。
 そして再びゆっくりとまぶたを閉じる。


 昭和の匂いのする古めかしい映像が、頭の中で映り始めた。
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