老人の居る運河
老人の居る運河
成人向完結
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ジャンル:その他
シリーズ:コピーライター 舞

公開開始日:2010/09/20
最終更新日:---

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老人の居る運河 第2章 2章 捕獲
老人に 拉致されたわけではない
私は 老人の領分に 侵入して 捕獲された 虜囚

なにを されても 老人の自由 思うがままの



今は 高層のマンションさえ 立ち並ぶ 都市の様相
でも 過去 そこには 売春禁止法前の 公証の遊郭地帯があり
その区域を 分けて 運河は 今も 流れて
かかる橋の脇には 今でも 一杯飲み屋 小料理屋の 看板が 数軒は並ぶ
どのような事情 解かりようがないけど その一角には
主が去って 捨てられ 廃屋となり残された 木造の家屋が 連なっていた

誰も住んでいるわけもない 崩れかかった 建造物が並ぶ
運河の脇の 草地の 路地に なんとなく 入り込み 歩く

私は 都市の 裏道を行く 写真とエッセイのために 
仕事のブログネタを 探して 取材していたから

裏側から 廃屋の連なり 眺めて デジカメを向けていたら
一軒に 裏木戸が空いていて 内部が 暗くも覗ける に気づく
職業意識というよりは 好奇心 のように思える
中に 入って 元は 厨房で 向こうにカウンター
嘗ては 和服着た ママさんが立ち
向こうには 夜の遊びの前に ひとときを過ごす 男達が 酒を飲む
古びて 崩れかけた 木と 埃の匂いの中に
人の匂いありし日の 光景を 想像して 写真を撮る

二階は 住居だったのか それとも
客をとった 娼婦の 仕事の 場だったのか

急な角度の 木の 階段を 靴のまま 登っていく 私
階上の 畳の 部屋は 思ったより 荒れていない 静かな空間だった

部屋の隅は暗く 窓からの明りはまぶしく
眼の慣れない うちは なにも視えなかったけど
人が 寝ていたのだ
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