マンション屋上の死角
第9章 終章 悪夢と結末
翌日の 新聞に
このビルの 屋上の水道塔から 飛び降り自殺があった と報じられた
死んだのは 50過ぎの無職の マンションの住人で
家賃を滞納しており 数ヶ月前から蒸発状態だった
間違いなく あの熟年男と 受け取れた
*
私は 想い出していた
青年との 最初の日の 縛りごっこで 水道塔に登ったときに
外側に向いた 鉄柵の一部が ほとんど朽ちていて
寄りかかったら 落ちてしまうから 気をつけて 近寄らないようにと
親切で 心優しい サディストからの 忠告があった
事業破綻で 世をはかなんでの 自殺とみえるが
事件性も あるとみて 警察は 捜査中で
屋上の管理室寝泊りしていた 管理人の青年を
重要参考人として 事情聴取 しているともあった
*
青年は 私がいるからと 水道塔上に 男を案内し
隙を見て 突き落としたのだろう
マンションの 唯一の住人の 私に
もしや 捜査の対象に 入ったとしても
アリバイをつくるために 友人宅に 泊まるよう 勧めて
私のことは すべて 事実を葬り隠し通す つもりなのだろうか?
たとえ 自分の 殺人犯が 立証されたとしても
そんな気がする
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