妖怪伝奇帖~浅篠原陰陽師秘録~
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発行者:鴉羽 霞柳
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理
シリーズ:浅篠原陰陽師秘録シリーズ

公開開始日:2010/10/25
最終更新日:2010/10/26 08:23

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妖怪伝奇帖~浅篠原陰陽師秘録~ 第1章 第壹幕「亊之始」
ほしい。


「はあ、其処まで言うなら仕方ないか。お父様の考えには賛同為兼ねるが、宜しく頼む。因みに、使用人は要らん。式神だけで十分足りてる。」

『然うかい。なら此方も準備を進めよう。詳しいことはまた後日。』

「ああ。」


通話が切れる。3分丁度。此奴は妙な所ばかりキッチリしてやがる。


「結婚、か……」


ホントに考えたことなかったな。まあ、彼奴とだけは絶対にしないが。


「しかし“妖怪退治”とはな。また厄介な仕事を……」


妖怪とは妖(あやかし)や物の怪(もののけ)の総称だ。妖とは、まあ化け物だとか幽霊だとかを想像すればいい。只、妖は人に害意を持たない。一方の物の怪は、然ういった妖が人を祟ったり呪ったりするようになったものを言う。俗に怪談話で語られるのは、字にもある通り、物の怪の類だ。オレは憑き物落しもやっているが、其の時に落とすのも物の怪だ。何せ、物の怪には悪霊や死霊、生き霊の類も含まれるんだからな。だが、“妖怪”となると状況が変わってくる。妖や物の怪といった“分類”ではなく、“妖怪”は然う言ったものを示す概念だからだ。オレがやっているのは、飽く迄も“憑き物落し”であって、斯う言う仕事は退魔師のすることだ。後、基本的に概念を退治する事は出来ないから、額面通りの意味をとってはいけないのだろう。何かしら別の意図がある筈だ。


「まあ、仕事を選べる状況ではない、か。」


どの道、働かなきゃ食っていけないのが世の常。詳しいことは合流してから聞けば善い。


「さて、今度は退魔師の真似事でもしますかね……」


† † †


「……ん………」

“おぉ、見ろ沙織。とっても綺麗だぞ。”


ぼやけた視界、目の前には黒い和服を着た男の人の背中。お父さん……?


“お、今度は菊か。大きいなぁ、三尺だな。”


意識は妙な浮遊感に包まれている。現実感は薄い。夢を見ているようだ。だが……


“ほら、沙織もこっちへ……”


……振り向いた其の人の顔だけは鮮烈に見えた。ボサボサの髪に薄い無精髭、顔立ち自体は美形だが、お世辞にも綺麗とは言えないその風体。然し、それを見ていた私の心は、とても安心していた。

「……ぉ…ぃ……」

「……ん…………?」


誰かが呼んでいる。途端に目の前の風景は歪んでぼやけ、見えなくなってしまった。


「……ぉ…い……沙織ぃ?」
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