宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
長屋につき、笠をはずすと、私はこの部屋に違和感を感じた。

何となく生臭い。

しかし、垢じみて、濡れた法衣や、自分の体が匂うのだと思った。

もし、匂いの原因をしっかりと確かめたなら、この件は、もっと早く解決したのかもしれない。

しかし、私は、新しい法衣に着替えて、元締めの元を訪ねてしまった。


米問屋板東屋には、江戸の鎖を束ねる、大元締めの坂東光太郎がいる。

そしてもう一人、八番組の仲間、弦太郎がいる。

今日なら弦太郎が確実に居て、光太郎との渡りをつけてくれると考えて、調査は早めに切り上げた。

坂東屋に着くと私は、いつもの仏間に通された。

美しく磨かれた仏壇がある。

私は、そこにまつられている故人の為に経を上げる。

いつもの習いだ。

元締めは、自分で、大罪を負っているのだと言う。

その罪は、君達とは違って、もっと重いのだと言う。

しかし私は、この美しく輝く仏壇を見ると、元締めが、本当の悪人とは思えなくなる。

そして、いつかは、その罪が清められるのではないかと、思えて来るのだ。

そして、自分の罪も。

そう思えるから、妙弥は、この仏間が好きだった。


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