宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
「一度なされた約束は守るものです。あなたも組の頭領なら、敷きたりの何たるかは、よくおわかりだろう?帰りなされ。普通なら許されぬ、この寺への出入りが許されたのじゃ、それで満足なされよ」

住職は、男を睨みつけ、一歩も引かない。

「住職様、お咲の事、知っておいででしょう?。どうか、お助け下さい。このままでは、は組が途絶えてしまう。敷きたりは確かに大事だ。それは分かっている。しかし、血よりも頼りになるものを、儂は知らない」

「そうだとしても、もう、どこの誰だか分からんぞ。あの年は、たくさんの子供達がここへ来た。名のある子ない子いろいろだ。ここでは乳飲み子には名をつけない。だから、乳母にも見分けがつかんだろう。これも運命と覚悟して、諦めるのだな。跡を継ぐ者は、必ず現れる。その者を大切にする事だ」

男は僧達の中に視線を向けたが、目当ての僧を見つけられず、仕方なく住職に頭を下げて、帰って行った。

住職は、江戸の町に目を馳せ、何事も起こしてくれるなよと、独り言を言った。



紫は、封書を胸の合わせに差し込み、お茶と粥を盆に乗せ、小走りに向かって来た。





「そんなに急いでは危ないよ!私は、消えて無くなりはしない」

庭を挟んだ向こう側の紫に、私は声をかけた。

しばらく、喉を使って居なかったから、私の声は少し掠れた。

「走ったって、転びはしないわ。そんなに鈍じゃないもの。とても美味しく出来たから、早く食べて頂戴」


昼間の明るい光の中で見る紫は、無視出来ないほど綺麗だった。

私は、ずっと眺めていたいとも思い、すぐにここから逃げたいとも思った。

「この手紙は、八番組宛で届いたのよ。後は鳶だけ。黒くまの事…それから、今扱っているこそ泥の件。私は、関わっているから、説明するわね」

昨夜の事など、おくびにも出さず、紫は明るかった。

あんな事があったのに、私も、何食わぬ顔をしているんだろう。

私はまた、元通りの意気地なしに戻って、紫からお盆を受け取った。
43
最初 前へ 40414243444546 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ