宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、善三さんの言葉に打ちのめされた。

傷ついた訳ではない。

私は、紫への気持ちに、ずっと言い訳をして来たことに気づいたのだ。

気づかぬふりをして来た罰だ。

そう言う、御仏の声が聞こえるようだ。

「要。今は信じなくていいんです。私の年になれば、これくらいの助言は出来ますからね。素直に言ったのは、あなたに困って欲しいからです。苦しんで、惑って、立ち止まって欲しいからです。そうすれば、きっと正しい道が見えてきます。人生長いんだ」

善三さんは、浴衣をたたみ、新しいお茶を淹れて、お膳の上に置いて出て行った。

三好屋は、良い番頭に恵まれた。

そんな噂が町には流れていた。

この店には、放免になった鎖がたくさんつとめている。

善三さんのおかげか、店は繁盛していて、すでに解きはなたれた仲間達は、余計な心配をする事なく静かにくらしていた。

その中心に、そう言う深力のある善三さんがいるのには、深いわけがありそうだ。

私は、数々の問題を抱え、障子のそとの青空に助けを求めた。

梅雨を払った空は、明るく晴れ渡り、暖かく私を包んだ。


数々の問題は、簡単に解けるものではなかった。

仲間を守り抜く。

それすら、必死にならなくては達せられないのに、住職から言われたこと、善三さんから言われたことは、さらに難しかった。

善三さんのいうことは、きっと正しい。

しかし私には、鎖として勤めを果たしながら、妻を持つ勇気はなかった。

こんなに危険な事をしながら、家族を守る事なんて私には出来そうもない。

朝日を浴びながら、私は、大きく息を吐いた。

すると、息を吐いた瞬間、紫の心が、私の心を満たした。

紫の力強い暖かさが私の心を満たし、上を向かせた。

言葉はなく、ただ私の心にある隙間に、紫が入って来たのだった。

我慢出来なくなって、私は話しかけた。

「紫さんか…私を慰めてくれるのは、あなたですか?」

心の中で、はいという返事が聞こえた。

「お経を読む時に、深い呼吸をするんです。あなたはその度に、私のそばにいてくれていたんですね?こんなに近くに居てくれたのに、気づいてあげられず、ごめんなさい。これからはあなたの分もお経を上げよう」

41
最初 前へ 38394041424344 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ