宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
「私が、寺に捨てられたのは、乳から離れてすぐの赤ん坊でした。きっと、お寺の頼んだ乳母か誰かの名前でしょう。それしか思いつきません」

「私も、そう言いました。紫さんもそう考え直したようです。私は、あなたの女の名前だったらと、期待したんですがね」

「そんな訳はない。それに、付き合うのは、鎖か、僧位のもの、友人も男ばかりですよ」

「要は、少しは惑った方がいい。でも僧に説教するわけには行きませんからね」

善三さんは笑う。

「要。人間はそんなに単純じゃありませんよ。私達は武家屋敷に忍び込んだ、そこの主人の記憶に細工をした。大罪だ。けれどそのお陰で、あれいらいかどあかしは出ていないし、松永家には、いい跡継ぎが出て来た。罪は残ります。しかし、それよりも、助かった人の幸せを考えませんか」

「要。いい人生になるなら、悩みかいもあるじゃないですか。一人前のお坊様になる日まで、もう少し回り道をなさるべきですよ。あなたより少しだけ年寄りの戯言です」

私は素直に礼を言った。

しかしそれは、私が大人だからではなくて、善三さんの話が気になって、上の空だったからに過ぎない。




紫は、まだ姿を見せなかった。

この店のお嬢様だから、やることがたくさんあるのだろうが、でも、一度も顔を見せないなんて、やはり変だった。


「上の空か…」

善三さんは、まだ食い下がる気らしい。

私は、二十人以上の鎖を束ねなくてはならない。

だから、要という地位に着いているのだった。

その私に、こんなに逆らった鎖はいなかった。

「私の言う事に、ここまで逆らったのは、善三さんが初めてだな。あなたを排除しようと思えば出来る立場に私はいるんですよ。どうしてそこまでいうんです?」

善三さんは、かえって楽しげな顔に見えた。

「なぜでしょうね。私には、人の人生が見えるんです。どんなにおぼろげでも、あまり外れたことがない。一番見てみたい自分の事は、全然見えないんですが、あなたの事は、初めからよく見えました。あなたが人の親になる姿が。信じなくて構いません。ただ、それが私の深力なんです。付き合ううち、私は確信を持ちました。あなたは、親となるべき人だ」

善三さんは、わたしの気の遠くなるような事を、平気な顔で言った。

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