宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私の心の弱さを、善三さんは知らないんだ。

私は話の向きを変えようと、目を閉じて別の話題を考えた。

しかし、体が暖まって来て、そのまま、眠ってしまったようだ。

しばらくして、善三さんの声で起こされた。

私は夢うつつのままで、浴衣を着、さっき居た部屋に戻った。

湯のみの冷えたお茶を喉を鳴らして飲み、体が求めるまま、さっきまでいた布団の中に潜り込む。

布団の中に紫の香が香った。

私の為に、温めてくれていたらしい。

布団の暖かさに胸が痛くなる。

けれど今は、切なさより、この布団の心地よさが勝った。

私の意識は、すぐに途切れ、翌朝まで眠りの中に沈んでいた。

障子の向こうは、もうずいぶん明るかった。

痛む体で、私は、布団の外に出て、水差しのみずを頂いた。

今、紫の心は見えない。

目を覚ませば、そこに居てくれると思っていたのに。

私は、紫がここにいてくれないことが不安なのだった。

布団が湿っているのも、浴衣の肩が湿っているのも、自分の汗だと思っていた。

そこには紫のいた残り香が、はっきりとあるのに。
「お体はどうです?お着替えを手伝いましょう」

障子の向こうで善三さんの声がした。

私は、紫じゃないのかと思いながら、障子を開けた。

紫を拒絶しながら、私はいつも彼女を求めているのだった。

善三さんは、私の浴衣を脱がせ、体を拭いてくれた。


私は、紫の事をそれとなくきいてみた。

「紫さんは、元気にしていますか?私の風邪が移ったりしていないでしょうか?」

善三さんは、少し困った顔をして、私の体を拭いてくれている。

私は、心配になってもう一度聞く。

善三さんは、私に新しい浴衣をかけてくれてから、話し始めた。

話しにくいのには、少し訳があった。

あることがあって、紫が泣いたからだ。

その涙の訳が、少し言いにくい。


「要は、きぬさんと言う方を知っていますか?夕べ紫さんが看病している時、うわごとしたそうです。紫さんは、その方がおられるせいで、要が自分を避けるのだと、そう思ったようです。いつもと変わりはしませんが、泣いていましたよ」

「きぬ…私には覚えがありませんが…私に女子の知り合いなど、あるわけもないし…」
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