宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力


町方は、文句を言いながらも、土をどこかから持って来ては、匂いのする辺りにどさどさと盛っている。

老成した役人だったら、こんなに簡単には行かなかったろうが、彼らは、紫の言葉を疑いもしなかった。

いなくなった頃を見計らって、木戸を開けてみると、そこにはこんもりと土が盛られていた。

彼らが去ったのがわかると、私はその事を鳶に知らせたいと思い、心の中で必死に話しかける。

しかし鳶は、私に胸騒ぎを伝えたくせに、何も言ってくれない。

私は、誰もいない部屋で、必死に鳶に話しかけた。

しかし、鳶の気配はどんどん弱くなる。

まるで、眠ってしまったように。

どこか、雨をしのげる所にいるならいいけれど。

私は手紙を残して、鳶の気配を感じた辺りへ足を運んだ。




強い雨はどんどん体温を奪って行った。

私は、紫の声を聞きながら、気を失ったようだ。

木から落ちなかったのは、とっさに体と幹を結びつけていたからだった。

今は、すでに月が見える時間だった。

しかし私は、高熱で動く事が出来ず、またすぐに気を失った。



鳶の気配が残っているのは、火消し櫓の辺りまでだった。

そこから先は、鳶の行き先を探る事は出来なかった。

紫は諦めて、三好屋へと足を向けた。

鳶の分かる所にいれば、やがて連絡があると思ったのである。




喉の渇きに、目が覚めた。

すでに、辺りは静寂に包まれていて、動く者はなかった。

私は、震える体で、社台の裏に降り立った。

落ち葉の中に隠したはずの釈丈を、手探りで探す。

目が慣れてくると、月明かりに光るものが見えた。

手を伸ばすが、それは、折れた槍の刃だった。

あの釈丈をなくすことは、私の命に関わるのに…

私は、よろよろしながら、ここに登る前の行動を思い出した。

樫の木を見つけ、そのとなりにある、二股杉の間に挟み込んでおいたのだった。

私は、そんな大切な事をも思い出せないほど、高い熱を出していた。

このままでは、紫に助けを求めてしまいそうだ。

そう思った私は、紫を訪ねる事にした。

会いに行くと言えば、紫は、三好屋で待っているだろう。

外で、危ない目に会う事はない。

私は、紫が話しかけ来るのを待ちながら、三好屋を目指した。

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