宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
「なんだあれは、ただ事じゃないぞ。そう言えば、渋谷辺りで、奇病が出たと言うが、関わりがあるんだろうか?」

「とにかく、魚屋と漁師を当たってみるか。川魚のようだが…」

二人は顔を見合わせ、相棒が、すぐに原因が分かると予想していることに安心した。

しかし、漁師が売ろうとしている魚は、まだ活きが良く、跳ねているし、魚屋は、川面を覗いて、早く何とかしてくれとせっついた。

「どうやら、川がおかしいらしいな。まさか、青戸の毒苔事件の再来か?」

「止めてくれよ。だとしたら大事になるぞ。あれは、自然毒が原因で、悪い苔が増えたんだったな。今年のように暑い日が続いた年だった。医者を呼んで、調べさせるか?」

「しかし、ここいら一帯だけだな。もしかしたら、誰かが、何か流したのかも知れん。あそこにある排水口が怪しいか」

「権現長屋か」

「普段悪い事の起こるところじゃないが、一応調べなくてはいけないな」

二人は降りしきる雨の中、排水口のあるあちら側まで、橋を渡る。

目を凝らしている二人の目の中を、何かが横切った。

「おい、あれは何だろう?」」
「おい誰かいるのか?」

町方は声をかける。

黒い影は、塀の中に消え去った。







しばらくは、ゆっくりと自分の事を考えたい。

そう思っていたのに、雲行きが怪しくなってきた。

川に浮いている魚は、妙な事だが、妙弥の住む権現長屋の周りにしか見られなかった。

町方でなくとも、権現長屋が怪しいと思うだろう。

しかし、どんなに小さな事でも、町方に疑われるような状況は避けたい。

幸い大雨で、人目は少ない。

私は早く長屋に戻り、辺りを見回してみるつもりだった。

長屋にもどると、雨水を流す為の溝の周りに、魚は浮いていた。

私は、辺りの生臭い匂いに、あることを思いつき、愕然とした。

黒くまの墓を暴きに行った時聞いたことだが、前橋のあの寺が、黒くまの育てられた寺だったのではないか。

だとすれば、鎖達を襲った毒が、あの食に混入されていたと考えるのが自然だ。

私は、自分の犯した過ちに、背中が寒くなった。

あの日、川に浮いていた魚を見たとき気づいていたら、こんな事態は避けられたのに。

今となっては、しばらく、江戸を離れているくらいしか、手はないように思われた。

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