宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
円生寺の僧達は、忙しさに、私にかまう余裕はないらしかった。

皆口々に、来てくれて助かったと言う。

彼らは、私との関わりを捨てたのに。

私は、こういう事があると、心の中に刺さっている棘に気づく。

修行が実り、いつか悟りが開かれたら、心の中に刺さった、棘も抜けるのかと思う。

しかし今は、刺さった棘が痛んだ。

私は、ただ利用されるだけの捨て駒なのだ。

私はそう感じてしまう。

住職様は、私の心を覗く事が出来るのか、ただ一人、私を叱る。

「妙弥御仏の前で、そんな顔をするでない。痛い時に痛い顔を見せては、人は救えないぞ。よう考えぃ」

住職様は、それだけ言うと、私の背を叩き、奥へ下がってしまう。

もっと話がしたい。

そう告げるといつも、今日はそこまで、また来る事じゃ、と言って帰される。

私は、不安を抱いたままで、帰ることになる。

今日も同じであった。

心の中が顔に出る程私は弱いのだ。

弱さ故、寺から出される事になったのだと今は分かる。

私は、ただ働いた。

そうしているうち、私は、僧達と打ち解けあった。

すると、私の心は柔らかくなり、痛みが和らいだ。

五日は、あっという間に過ぎ去り、私は、寺を出る日を迎えた。

帰ることに、何の楽しみを感じるのか、私の心は弾んだ。

掃除が終わり、読経が始まる頃には、雨は本降りになった。

高い屋根にあたる雨の音は、どこか涼しげだ。

私は、今が暇の時だと思い、住職に挨拶をしに行った。

私は、何の用意も無く、また修行の旅に出ると言いに言っただけなのだが、住職からは、別の話があった。

私は、一つの寂しさを持ってその話を聞いた。


「妙弥。お前は、今年の冬、十六になるな。その時まで良く考えてすごせ。それまでは、俗人でも、僧でもない。お前の心とよく対話して、よき道を行くが良い。お前が法衣を脱いだとしても、わしの弟子に変わりはない。そして、この寺の僧も、お前の兄弟だ。お前を捨てたものなど、誰もいないのだぞ」

私は、傷ついた。

口答えなどしたこともないのに、住職様の言葉に、はいと返事が出来なかった。

「捨てられてなどいないとは、どういう事です?私は親の顔を知らないし、親戚すらないのです。それは、捨てられたと言うことではないのですか」

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