宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
紫さん、私も、気が遠くなる…


「下ろして」

紫は、かごから飛び出した。

すぐそこで、鳶が助けを求めている。

私が助けなきゃ。

神社の入り口らしき小道が見えている。

紫は息も乱さずに、小道を目指した。

「鳶、しっかりして。早く、薬を。亀さん、薬を鳶に飲ませて」

「なんじゃと!大変じゃ、紫、なぜそんな事知っておる」

亀は、すぐに鳶のもとに戻ると、残りを鳶の口に流し込んだ。

良く見ると確かに、手首に僅かな傷があった。

ひょっとしたら、弦太郎よりも、鳶の方が危ないかも知れぬ。

亀は、懸命に鳶に声をかけ続けた。

「おい、鳶。起きんかい!しっかりせい」

鳶は、時折目を開け、口を開こうとするが、すでに毒が回り始めているのか、意識がはっきりしなかった。

「しっかりせんか!紫が医者を連れて来たぞ」






私は、このまま死ぬのか?

何も遺さず、塵となるのか。

はっきりしない意識の中で、私はもがいていた。

紫の声が聞こえる…

私に薬を…?

また何も分からなくなった。




「ただの毒ではないな。強い麻酔だ。幻覚を見て、仲間同士斬り合ったり、機密情報をしゃべってしまうこともある。それが目的なのだろうな」

医者は、水筒の水を二人に飲ませた。

「尽安どのではないか!」

水を汲みに行っていた亀さんが驚きの声を出した。

尽安は、鎖一番組の組元締めである。

前の晩、敵の遺体が多数運ばれた。

医師学問所に通う学生の為、尽安は、遺体が傷まないよう処理をしていたのだ。

仕事を終わり、屋敷から出た所で、紫と遭遇したのだった。

「初めはね、どうしたことかと思いましたよ。しかし、話を聞いているうちそうかなと思いました。二人とも、大したことがなくて良かったな」

尽安先生は、私に、薬を取りに来るように言うと、駕籠を使わず、歩き去った。

私は、安心して、ただ眠りこむ二人の顔を眺めていた。

間に合ったんだ。

「亀さん、まだ駕籠が足りないわね。二人だけで返すわけにも行かないし、どうしたらいいかしら」

「駕籠かきも休ませなきゃならんし。少し待ってみようじゃないか」

亀さんは、笑っていた。





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