宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、嫌な予感が的中した時のように、せっかく着替えた着物を冷や汗に濡らした。

もしかしたら、私には、この目の他にも、深力があるのかも知れない。

私は、腰に結んでいる手拭いで、浮いて来た冷や汗を拭って、亀さんが持って来る水筒の水を待つ事にした。

間もなく、亀さんが歩く時のすたすたと言う草履の音が聞こえて来た。

「どうした?水を飲むか?」

私は水筒をもらい、一気に、飲み干し、ため息をついた。

亀さんは、叱らないだろうと思ったのだ。

「鳶、大丈夫か?お前が休むなど、三年ぶりだ」

「疲れたんです。旅の後だったから、弦太郎さんは、ことのほか重たいし」

「そうか、鎖を頼むぞ鳶。お前が頼りだ」

「…」

私は、紫のしゃくりあげる声が聞こえてきても、もう驚かなかった。

先に降りていく亀さんの背中を目標に、私は、弦太郎さんを石段の下まで背負うことが出来た。

しかし、もう立っていられない。

弦太郎さんを降ろすと、亀さんが少し眠れと言ってくれた。

私は、その言葉に甘え、気を失うようにその場で、目を閉じた。私は、また泣きそうになった。

朝まで眠れなかったのだって、鳶が、あんな事を言うからよ。

やっと眠ったと思ったのに、突然さらばだなんて、本当に本当に心配したんだからね。

私は、鳶には聞こえないから、声に出して文句を言った。

仲間の窮地を救う事が出来て、少し興奮していたのだ。

しかし、少し不安な事もあった。

私の耳は、少しおかしいらしいのだ。

時折、実物の声を聞いているように感じる。

特に、鳶の声ははっきり聞こえて来る。

風に乗って来る、囁くような声とは、明らかに違う。

好きだったって言われた時は、すぐそこに、いるみたいだった。

どうやら、私の耳は、今までとは違うらしい。

聞いたことのある声なら、ずっと遠くまで力が及ぶようになっている。

いいのか悪いのか分からないから、もうしばらく黙っているね!

私はそう決めて、駕籠かきに言った。

いくらでも払うから、早く走って、兄さんが怪我をしたの。

言葉が影響したのか、駕籠の足は明らかに早くなった。

さっきまで、私は泣きべそをかいていたし、きっと同情してくれたのだ。

もうすぐよ。

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