宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、血潮と泥で汚れた作務衣を脱ぎ捨て、新しい着物に着替えた。

そして、ひとまず、辺りを見回した。

走り去る荷車に、なにが乗っているのか、私は考えもしなかった。

そして、神田の方に目を向けると、二台の駕籠がこちらを目指しているのが見えた。

まだかなり距離がある。

紫か?

私はつぶやいた。

紫と私は、いつもこうだ。

私はただ待つばかり。

紫は、私の声音を聞いては、心を砕く。

私は、下を向くしか出来ぬ。

そして、紫のわがままを聞いてやるくらいしか、思いを巡らせる事が出来ない。

駕籠から、紫の絹がはためいた。

ありがとう。

私は口には出さなかった。

その代わり、弦太郎さんが医者を必要とする怪我をしたから、急いで欲しいと、またつぶやいた。

紫は、絹を振り回して答える。

私は、僧である限り、紫と心を通わせる事は出来ない。

私には、忘れねばならぬ事がもう一つあったのだ。

それは、知り初めたときから、罪だった。

その気持ちが、こんなに大きく育つとは、あの時には、思いもしなかった。 私が、怪我人がいると言ったせいか、駕籠の足が早くなった。

弦太郎さんを石段の下まで背負って降りるには、急いだ方が良さそうだ。

弦太郎さんを振り返ると、すでに起き上がり、こちらを見ている。

「俺は、元締めになることが出来たら、静と夫婦になるんだ」

まだ虚ろな目でつぶやいた。

「俺は静の術にはかからなかったぞ」

弦太郎さんは、そう言って、また気絶した。

どういう意味だろう。

鎖同士で、深力を試すなんて事が有るのだろうか。

本当に心配したんだからね!

私の背後から、紫の声がする。

紫の声を聞いただけで、私は、勇気を持つ。

しかし、弦太郎さんを背負い、振り向いた時、紫の姿はなかった。

空耳か?

私はまたつぶやいた。

私は何度も転げ落ちそうになりながら、ゆっくりと降りていく。

亀さんは、また川の水を汲みに行って、近くにはいなかった。

風に声が乗ったとしても、少しおかしいが、私は、不思議には思わなかった。

要、静を忘れてくれよ!

今度は亀さんの声がする。

私は目眩を感じて、弦太郎さんを石段の上に降ろし、休む事にした。

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