宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、その場にへたり込んで、美しいくノ一の顔を見返す。

「元締めへの報告は私がする。駕籠が着いたら、すぐに帰れ、しばらくは、勤めはかからないだろう。私の事は、決して話してはいけない」

「駕籠とは、あなたが呼んで下さったのですか?」

「なにを言う。お前の仲間だろう?こちらにまっしぐらに向かって来るぞ。あの駕籠を、見に行っているうち、弦には迷惑をかけた。だが、奴も、元は十番組。毒には慣れているはずだ。小柄な女の鎖が、お前の組にいるだろう?」

「…はい…」

「後は心配いらぬ」

「敵の死骸はどうするのです?そのままにしてはおけますまい?」

「死骸を必要とする者もいる。医者を目指す者は、鎖と中にもいるのだ。それに、鎖は輪を持って鎖となす。ここにも街を守る者はいるのだ」

くノ一は、平然とそう口にした。

「とりあえず、弦太郎にこれを飲ませよ、医者にかかるまで保つだろう」

「…あなたは何処に?」

「知ってどうすると言うのだ?知ったところで、お前にはどうにも出来ないぞ」

静は、なぞを残したまま、私の目の前を飛ぶように消えていった。


気づくと、私の手には、二人分の着物と、水筒が残されていた。

しかし、どうやって手に入れたのか、私は思い出せない。

けれども、弦太郎さんの怪我の事や、薬の事、ここへ向かっている紫の事は、はっきり分かっていた。

私は急ぎ、今降りてきた石段を登った。

こんなにも疲れたのは、厳しい旅の後だったからだと、私は不甲斐なさに言い訳をした。


「亀さん。これを、弦太郎さんに。着物も…」

私は、自分でも驚くほど、さっき起きた出来事を覚えていなかった。

「忍法虚無か…。かかりおったか!」

亀さんは、笑いながら、弦太郎さんに薬を飲ませた。

「静の術にかかるのは、男だけじゃ。静は男の下心に潜り込み、相手を支配する。忘れろと言われたろう?思い出せば、死ぬからだ。しっかり忘れるんじゃぞ」

「忘れろと言われても、そもそも何も分からないんです。分からないものをどうやって忘れろと言うのでしょう?」

「その割には顔が紅いわ。しかし、忘れねば死ぬというのは誠だからな!さっさと忘れろよ!せっかく育てた要に死なれてはたまらんからな」

亀さんは、また、楽しそうに笑った。
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