宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私の目には、黒と紫の影が、動き回っているとしか見えず、味方が静なのかどうか分からなかった。

しかし、味方らしき二人は、見る間に敵の数を減らして行った。

弦太郎さんは、走り寄る私に気付いて、振り向いたが、目が合う前に、ばたりと倒れてしまった。

弦太郎さんの傷は、太ももの、一撃だけだ。

恐らくは、毒なのだろうと思われた。

呼びかけても、弦太郎さんは、答えなかった。

しかし、武道の覚えが有るためか、手足の元には、予め、血止めが出来るよう、輪になった細い縄が回してあるようで、足は、血止めがされていた。

毒も、体にはあまり回っていないように思われた。

私は、足の付け根を締めている細い縄を締め直し、弦太郎さんを背負い、神社まで行こうと歩き出した。

敵は一掃されたのか、背後に人の気配はなかった。

私達は助かったのか?

敵を倒したのは、味方なのか?

私は、相変わらず、悲鳴のような息をしながら、やっとのことで神社までたどり着いた。

亀さんは、社から抜け出し、水を汲んで来てくれていた。

「魚がいる川の水じゃ。弦太郎はどうした?」


「短剣に毒が仕込んであったのでは…しかし、自分で足の付け根を縛って有りました。脈もしっかりしています。早駕籠を頼めば、きっと助かります」

「そうか、間に合うと良いが…、暗殺者にとっては、剣に塗った毒が命だ。急がねば、命は助かっても、寝たきりになる…」

「しかし、この着物では…どこかで、用意しなくては…」

「お前の法衣はどうした?お前の作務衣を弦太郎に着せればいい」

私は、恐らくは、ボロボロになった法衣を思った。

「静か?」

「わかりません。私には、見えませんでした。でも、もう敵の気配はありません。とにかく、何か着るものを探して来ます」

私は、亀さんが汲んで来た水を一気に飲み干して、着るものを探しに出た。

探すと言っても、まだ日が上がったばかり、しかも、月末の棚ざらいを終えたばかりの商家は、まだ起き出す気配がない。

善三がいれば、どこかから、調達してくれたろうが、こんなに大事になるなんて考えもしなかった。

私は、疲れきった体を無理やり動かして石段を下る。

中ほどまで下った時、目の前に、紫の忍びが現れた。

「弦太郎はどうだ?今お前の仲間が医者を連れてくる」
20
最初 前へ 17181920212223 次へ 最後
ページへ 
TOP