宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、月を見上げながら、しばらくは、何も考えられず、ぼうっとしていた。

体が冷えて、布団に入ったが、眠れやしない。

目をつぶると、少し情けない鳶の顔が、浮かんできた。

私は、大切な鳶との絆が途切れるような気がして、寂しかった。

いつの間にか、就いてしまった眠りの中で、また鳶の声が聞こえて来て……

私は、大変な事態に巻き込まれた。



「こら、起きんかい!夕べ大方の敵は静の手にかかった。しかし、油断はするなよ。まだ敵はいるはずだ…果たして夜明けを待つべきだろうか…考えどころじゃ…」

私の槍は、二本にわかれたまま部屋の隅に立てかけられていた。

弦太郎さんは、すで縁側でなにかしていた。

なんとなく、嫌な予感がする。

私は、すぐに、宿の庭に出た。

目が合うと、弦太郎さんは、勤めの時のような厳しい顔を向けた。

死体は無いが、辺りに血の跡がある。

油断して眠っている間に、とんでもないことが起きていた。

私の背中を冷や汗が伝った。



「鳶。茶でも飲め。なんという顔じゃ。初めから、弦太郎は力仕事、お前は生き残る事が仕事。それが、それぞれの役割だ。しかし静にしてこの有様とは、油断ならないぞ、二人とも。鎖片平を着た方がよい!」

「あんなもの着ていたら、逃げ足が遅くなる。私は遠慮しておきますよ。死ぬときは、死ぬんだから要に着せてやって下さい」

「弦、油断ならん相手だぞ。静がいるが…」

「油断などしていませんよ。ただ、動きにくくて嫌いなんです。それに、静を信じていますから」

「無理にとは言わない。鳶。お前はこれを着ろ。少し重いが、修行だと思ってな」

私は、もう一度着物を全部脱ぎ、鎖片平を着た。

弦太郎さんが言うように、たしかに重く、動きくい。

しかし、網目が細かく、短刀の刃も通しそうもなかった。

私は、開け始めた空を見ながら、早く紫に会いたいと思った。

「墓を改めにいくぞ。そのまま、一気に神田をめざす」

私達は、亀さんの後に続いた。

墓は、綺麗に埋まっていたが、まっすぐ立てたはずの墓標が曲がっていた。私達は、さっさとそれをなおし、花を供えて、神田を目指した。

歩き出した時から、私の心臓は、激しく打った。

墓にいたときから、嫌な気配を感じていたからだ。
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