宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力
私は、やはり明日早く出発するからと言って、先に宿賃を女に渡した。

「これから私だけ行って、お経を上げて参ります。まだご家族が揃っていないのです」

女は納得して、夕げを運んでおくと言って背を向けた。

私は、寺に話を通しに行ったのだ。

墓を掘り起こすには、それなりの訳が必要だからだ。

黒くまは、大工で、屋根の骨を組んでいる時、めまいを起こしてそこから落ち、頭をぶつけて亡くなった。

急なことで、婆様が間に合わなかった。

どうしても一緒に埋めてやりたい物があると言うので、墓のそばに穴を掘らせて欲しい。

そう言って相談して見た。

「それは大変な事だ。どうぞと言ってさしあげたいが、他の墓にも関わること。どうか、お参りだけに留めていただきたい」

金色の袈裟の僧が言った。

「見たところ、隣には、どなたも入られていない。その墓所を婆様が買ってもいいと言っています」

私は、三両ほどを僧の前に差し出した。

「そうまでして、お孫さんのために。分かりました。ただし、昼間は困ります。お参りは構いませんが。参拝者が帰ってからお願いします。明かりは用意しますから。本庄大工熊吉の墓ですね」

「ありがとう存じます。新しい紋付きの着物を棺桶に掛けてやるだけですから。すぐすみます。鍬の扱いの出来る者を伴っていますから」

僧の顔色は、少し変わったが、目の前に後二両を出すと、なるべく直ぐに済ませと言って、立ち去った。

私は、また一つ罪を重ねていた。

御仏に対してか、それとも、自分の心に対してか…

正しい人の道から外れる事に対して、私は、また負い目を感じる。

しかし私は、立ち止まれない。

それほどに強くはないと知っていたからだ。



宿に帰り、私は子細を仲間に伝えた。

いよいよ敵の中に足を踏み入れる。

私は、無条件に体を震わせた。

十番組について、私はなにも知らない。

鎖を断罪するために存在する組を、避けたい気持ちがあったからだ。

だから、どんな鎖が私達を守ってくれているのか、それさえ分からない。

「本当に、忍びの守りがついているのでしょうか?」

「臆病者め!ちゃんとついておるわい。くの一静というのがな。顔は見ないが花の十番組じゃ。そう簡単に出してたまるか!」
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