宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/11/06
最終更新日:2013/07/08 01:14

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宵の鳶、風聞きの紫、鎖八番組夜話 第1章 初宵 二つ目の力


「鳶。おまえ誤解をするなよ。お前はこれから要になって行くんだ。前の要が誰か知ってるだろう?私や、亀さんがお前を支えている。頼っていいんだ。お前は、要になり、私は元締めになる。鎖はそうやって繋がって来た」

「誰が、黒くまの裏切りを見破ったのです?」

私は聞いていた。

「ずいぶん前に、似たような事があったのを覚えていた人がいたのさ。お前などまだ影も形もない頃の話だよ。その時は、井戸に流された毒が原因だった。そいつは、鎖になる前、薬師だったんだ。外された事を恨んで、組を皆殺しにしようとした。その話を聞いて、今度は、薬師と関わりのある鎖を探ってみた。そこで、浮き上がってきたのが黒くまだ。彼は鎖になるまで、薬師の家に暮らしていた。それだけじゃ犯人とは言えないが、死んだ振りをしているとしたら、まちがいなかろう」

「じゃあ、亀さんが…」

「でもお前が、一人だけ死んだって言う事に鍵があると気づかなければ、黒くまの昔を探りはしなかった。だからこれは、お前の手柄だ」

「私は、ただ不思議に思っただけなんですが…」

「余計な拘りは必要なないぞ。鳶」


「何かに拘ったところで、わしらは皆同じ、修行中の身じゃ。じゃから一々そんな顔をする必要はないぞ」

亀さんはそう言って、私の背中をドンと叩いた。

背中を叩かれると、そこに張り付いていた死への恐怖が、自然に剥がれ落ち、心が静まるような気がした。

鳶はいつも思う、母親って言うのは、こんな風に、強くて優しいものなんじゃないのかと。




私達は、夕暮れになる前に品川につき、小さな茶屋に入った。

私がいるために、すぐそこの浄泉寺への墓参りだと、相手は早合点してくれた。

「浄泉寺なら、まだ入れてくれますよ。墓参りは今日のうちに済ませて、明日はゆっくりなさっては?」

下働きの女は、いつもの通りという風に、そう言った。

墓参りの客は、この宿にとっては、日常なのだろう。

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