封蓮貴~悲しい旋律~
第2章 第1夜 依頼
―旧校舎
ギィィィィィ…と扉を開くと、奥は薄暗い廊下が続いていた。
倉庫化しているだけあって、中は埃が舞い、窓ガラスはひび割れ、破片はその辺に散らばっていた。
「酷い有様だな」
「仕方ないよ、ここは倉庫として使われ始めて20年近くは経ってるようだし。
掃除なんてする人、いないんじゃないかな。」
「で、なんでここに宿直室があるんだよ」
最もな問いに、愛羅は苦笑を漏らした。
「前は新校舎にあったんだけど…色々問題が起きてね。
問題を起こさない為に、こっちに移したって聞いてるよ」
「問題ねぇ…、教師による盗難か何かか?」
「あ~…まぁ、そんなところかな」
それ以上は口を割りそうにない愛羅に、焔もそれ以上聞きはしなかった。
「で、その宿直室とやらは?」
「この廊下を進んだ先だよ」
愛羅の指差す方向は、暗闇に満ちていた……。
パリン、パリン。下に落ちているガラスの破片を踏みながら廊下を進んでいく。
愛羅も焔も夜目が聞くから、懐中電灯などは必要ない。
宿直室までの廊下には一つも電灯はなく、薄暗い。
「よくこんなところに寝泊りできるな」
「仕事、だからじゃない?」
薄暗い中を進みながら話す二人の顔は真剣な表情になっていた。
奥に進むに連れて、空気が重くなり気温も低くなっていく。
フワリフワリと空気が愛羅に纏わりつく。
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