封蓮貴~悲しい旋律~
第2章 第1夜 依頼
――龍神学園
文武両道の精神、和と洋の中和を重んじ、いついかなる時も精神統一を掲げる格式高い学園である。
エスカレータ式のこの学園は、幼等部、初等部、中等部、高等部、大学部と施設が分かれている。
因みに、ペット同伴が可能と、結構フリーダムな部分もある。
「で、今回事件が起きてるのは高等部らしい」
「お前にぴったりの依頼だな」
「………煩い、焔」
足元でクックッと動物らしからぬ笑い声をあげている焔をキッと睨み付ける愛羅は、紺のブレザーとスカートを身に付けていた。
「しかし、ほんと似合うよな女の制服」
「……僕は着たくて着てるんじゃない、言い付けだから仕方なく着てるんだ!!」
愛羅は忌々しそうに己の制服を見下ろした。
彼は立派な男児だ。
いくら顔立ちが女性寄りだろうと、体が華奢だろうと、彼は男。
しかし彼の一族は、彼に女装を強要していた。
文句を言いたかったが、当主の言葉は覆すことなど出来る筈がなく。
物心ついたときから今まで、日中は‘女性’として過ごさなければならなかった。
「何で女として過ごさなきゃならないんだよ」
「知らん。その事に関しては親父さんに訊くのが一番だろ」
焔はそう言うとピョイッと愛羅の肩に飛び乗った。
「あの人が教えてくれるはずないだろう」
いつだって、肝心な事は言わずスルリと抜けていく父親を思い出して溜め息をひとつ。
「なら考えるのは止めとけ。今は依頼を最優先させるぞ」
「そうだね」
とりあえず現場に行こう、と足を宿直室のある旧校舎に向け進もうとすると、
「愛羅」
ガシッと腕を捕まれ、グイッと引っ張られてしまった。
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