封蓮貴~悲しい旋律~
第2章 第1夜 依頼
緑髪の少年―翡翠に同意を求められ、蒼髪の少年―湊は軽く頷いた。
二人が口にした事実に、愛羅は眉を顰めた。
あれが人間の手によって作られた亜空間なら、何故あんなところに作られた?
そもそも何の目的で亜空間なんて作ったんだ?
話を聞く限りじゃ、リスクも高そうなのに。
疑問が疑問を呼び、ますます眉間に皺が寄る。
「愛羅ー、眉間に皺が寄ってるわよ」
「だって、わからない事尽くしなんだ」
「まぁ、普通は人が亜空間なんて作りませんからね。亜空間は一つの隔離された世界ですし」
「……亜空間を作らないと出来ない事をしようとしてる、とか」
ポツリと、紫苑から放たれた一言に、全員の動きが止まった。
全員の視線は、紫苑に向けられた。
「紫苑、今なんて…」
「人が、リスク覚悟に亜空間を作る理由はただ一つ……その術士、禁術を発動させるつもり」
「!!」
愛羅は眼を見開いた。
紫苑の言葉に驚いたのもあるが、まさか、身近で禁術を行うのに遭遇なんてするはずがないと、何処か思っていたからだ。
「…確かに。禁術を発動させるなら、亜空間以上に適した場所はないよ。周りに影響も出ないし、何より感知されない」
「人知れず禁忌の術を行うことが出来る、最適な環境だな」
翡翠も湊も、紫苑の言葉に同意するように告げた。
「……本当に、厄介な事になったな……」
6人の様子を薄っすら目を開けて見ながら、焔は小さく呟いた。
22