封蓮貴~悲しい旋律~
第2章 第1夜 依頼
カコーン...
「―――と、言う訳だ。お前に、その件について任せたい」
「……僕に、ですか。まぁ、場所を考えれば、僕が一番適任でしょう。分かりました、引き受けます」
「頼んだぞ、愛羅」
「『緋守』の名に恥じぬよう、頑張ります」
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パタン...
「ふぅ…」
「愛羅、親父さんの話何だって?」
「焔」
屋敷の奥に位置する居間から出てきた少年―愛羅に話しかけたのは、綺麗な銀色の毛並みの小柄な狐、焔だった。
金色の瞳に、愛羅の姿を映し見上げてくる彼の口元は不機嫌そうにへの字になっていた。
狐なのに、何処か人間染みたその表情が可笑しくて、小さく笑う。
「何笑ってんだよ」
「いや、焔があまりにも人間染みた顔するから」
「お前と一緒にいるからな、仕方ねぇだろ。で、何の話だったんだ?」
笑われたことに少し拗ねた様子を見せながらも再度問う焔に、愛羅は笑みを消した。
「僕が通ってる学校に、最近出るらしい」
「お前が通ってるって…龍神学園にか?」
「うん。何でもここ最近、宿直の先生達が何処からともなく聞こえてくる『旋律』に精神的に参ってるらしい」
「……人間の仕業じゃないのか?」
「ピアノやその他の楽器が置いてある場所は全て施錠済み。人影もなかったみたいなんだよ」
愛羅が先程渡されたのであろう書類に目を通しながら答えると、焔はただ興味なさそうに小さく欠伸を零した。
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