封蓮貴~悲しい旋律~
第2章 第1夜 依頼
一度屋敷に戻ってきた愛羅は、すぐに自室に向かった。
途中誰かに呼び止められた気がしたが、カガミのことでいっぱいで足を止めはしなかった。
バタンッ
扉を勢いよく閉めるとカガミを布団の上に寝かせた。
「カガミ……」
「マスター、大丈夫よ。さっきも言ったけど、魔力を大量に放出して気を失ってるだけ。力が戻れば、元気になるわ」
「……だが、カガミは高位の妖魔だ。魔力もかなりあるはずだぞ?」
焔の言う通り、カガミは妖魔の仲でも高位に属し、それに伴って魔力の量も半端ではない。
普通なら、こんな風に倒れるなんて事態は起こらないはずだ。
「……あの糸だ」
ボソリと呟かれた言葉に焔と月花は真剣な顔つきになった。
「封魔の術式が施してあったな」
「それも…かなり強力なものね」
「……封魔の術式は術者の力によって5段階位に分けられる。…あれは、多分かなり高等な術式だ」
「…術士が関わってる、厄介なことだな」
焔は溜息を深く吐きながら寝そべった。
「焔?どうしたの?」
寝そべった焔を心配そうに見つめる愛羅に、焔は尻尾を軽く振り
「少し彼ただけだ」
ちょっと寝る、と寝てしまった焔に呆れた様に笑う。
「マスター…今回の件、あの方達を呼んだほうが良いわ。悔しいけど、私やカガミじゃとても太刀打ち出来ない。私たちは、役立たずよ」
「そんなことない、月花もカガミも十分力になってくれたよ」
悔しそうに、そして悲しそうに告げる月花の頭をヨシヨシと撫でながら微笑む。
彼女たちは十分力になってくれた。
だからこそ、今回“術士”が関わってるのが分かったのだから。
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