長船青治の小品集
長船青治の小品集

発行者:長船青治
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ノンフィクション
シリーズ:長船青治の小品集

公開開始日:2015/01/18
最終更新日:2015/01/18 23:20

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
長船青治の小品集 第1章 荷馬車
物心ついた頃は、昭和32年だった。工務店の観音開きの玄関の前にぼんやりと立っていると目の前を材木屋の古い荷馬車がゆっくりと通過するのだった。たて髪を揺らして、力一杯、足を踏ん張ってたくさんの材木を載せて、車輪を軋ませながらゆっくりと通過していたが、ある日、空荷で材木を運ぶために来たのだろうまた目の前に現れたのだった。私は、その時、はじめて大きな馬の真っ黒な眼を穴の開くほど、通り過ぎる間、じっと見ていた。焦げ茶色の大きな体に真っ黒な立て髪のその馬は、つと立ち止まり、小学5年生の私に気がついたのか瞬きもせずじっと私を見ていた。私は、ぼんやりとしたままだったけれど、なぜかたじろぎはしなかったのだけれど、だけど、勇気を出してというような自分自身を鼓舞するという感情もなかったので、ただ観音開きの曇りガラスの玄関の前に立ったままその馬の真っ黒な眼に吸い込まれていた。
1
最初 前へ 12 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ