珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第7章 本当の気持ち
エレベーターで26階まで上がり、着いたところはお洒落な和食屋だった。
個室があり、しかもその個室ひとつひとつから、夜景が見渡せる。
「すごい!お洒落なお店ですね~!」
お店の雰囲気のよさに、私のテンションは一気に上がってしまった。
個室に入ると、半円形にくりぬかれた大きな飾り窓から、キラキラと輝く夜景が見える。
「以前、客との接待で来てな」
主任はスーツのジャケットをハンガーに掛けて間接照明の光るイスへ腰をおろした。
そして細長いお品書きを開いた後、ぼそっと続けた。
「その時に、美村をここに連れてきたら喜びそうだな、と思っていたんだ」
その言葉に、正面に腰をおろしていた私は、個室のデザインを見回すのをやめて、主任を見た。
主任は、黙ってお品書きを見ている。
「……主任、私と一緒にいないときに、私のこと考えてくれてたんですか?」
「ん?あぁ」
主任は少しだけ私を見て、すぐにお品書きに目を戻した。
本当にちっちゃなこと。
他の人にとってみればちっちゃなことかもしれない。
主任にとっても、全然意味のないことかもしれない。
でも、主任が、私の知らないところで、私のことを考えてくれた。
このお洒落なお店を見て、美村が喜びそうだって考えてくれた。
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