珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第6章 夢かうつつか
主任からの答えは、髪を乾かし終わった頃届いた。
『あいている。仕事終わったら俺の車でいいか?』
一瞬、『あいている』のところを、『あいしてる』と見間違えた私は、舞い上がり、パニックになりかけた。
そして、五分後、そんな自分にかなり落ち込んだ。
『あいしてる』かぁ。
そんな言葉、本当にいただけたらどんなに幸せだろうか。
私はパソコンの入力をしながら、ちらりと斜め前の主任に目を向ける。
今日のネクタイは、さわやかなライトグリーン。
真剣な表情で書類に目を向けている。真剣な表情がサマになるなあ。
以前、主任の机の机を拭いている時に、ちらりと書類を見てみたことがあるけど、難しすぎて、私にはさっぱりわからなかった。
「美村」
「は、はい!」
ふと、主任の視線が私に向いて、私は数センチ、体を飛び上がらせた。
「この書類の入力を頼む」
「あ、はい、わかりました」
一緒に仕事できるだけで、幸せ。
私のこと好きじゃなくても、幸せ。
そう、だったのに。
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