珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第6章 夢かうつつか
洋ちゃんの話によると、部長の姪っ子、美人受付嬢、比佐田リオナさんは、斉藤主任のことを気に入っているらしい。
そして、部長は、斉藤主任とのお見合いをセッティングしたとか、しないとか。
したとか、しないとかって!
「そこが一番大事なんだよ~洋ちゃん」
家に帰って、私はお風呂上りのビールのプルタブを開けた。
携帯はベッドの上。
主任からのメールは、ない。
部長から、お見合いを勧められたら、断れるわけがない。
主任は、成績もよくて、部長にも気に入られているし、ありえない話じゃないんだ。
私はベッドの上に転がっている携帯を拾い上げて、その画面を開いた。
聞きたいけど、聞けないことだらけ。
あの夜、私たち、なにかありましたか?
部長の姪っ子とお見合いしたんですか?もしくは勧められているんですか?
聞きたい。
けど聞けない。
もしかしたら主任は、リオナさんとのお見合いを勧められていて、でも、私とのことに(誤解だったけど)責任を感じて、悩んでいたのかもしれない。
でも、それが誤解だとわかれば……
「やだ!」
私は、携帯をバチンッと閉じた。
主任が他の人と結婚しちゃうなんてイヤだ。絶対、イヤ。
だったら、どういたらいいの、奈緒。
じっとしているだけじゃ、なんにも変わらない。
主任が、まわりがどうにかしてくれるなんて、思っていたら、いつまでたっても、きっとこのまま。
『聞きたいけど、聞けない~』なんて言ってたら
『こんな私なんて……』って言ってたら
きっとこのまま主任は別の人と結婚しちゃう。
私は携帯を開いて、送信先を主任に設定した。
『話したいことがあります。明日の夜、お時間あいていますか?』
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