珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第4章 奈緒、舞い上がる
私はベッドの中で、パッチリと目を開けた。
主任の端整な顔が、一瞬にして自分の部屋の景色に変わる。
私は、ベッドボードで鳴り続ける携帯のアラームを憎しみを込めて両手で止めた。
「なんて夢……」
待ちに待った日曜日の朝。
実は、主任の夢を見るのは、初めてじゃなかった。
『家に来るか?』と言われてから、ほぼ毎日、主任は私の夢の中に出てきていた。
でも、今日のは……
「重症、だよなぁ」
主任が夢に出てくるたび、現実の主任と会うのが気まずくなる。
『俺の家くるか?』なんて、刺激的なことをメールで言っておいて、会社では相変わらず厳しい主任。
動揺で、よけいミスが増える私。
ため息をついて、私を呼ぶ主任。
仕事は仕事。
主任はそう言うけれど。私だって、わかるけど。
夢の中みたいに、ラブラブになれる時は、来るのかな。
プライベートになったら、怖い主任から、いつも夢に出てくるような優しい『秋人』に、ちゃんと変わってくれるのかな。
会社で主任に怒られるたび、すごく不安になる。
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