珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第4章 奈緒、舞い上がる
「奈緒~今日はどこ行く~?」
お昼のチャイムが鳴り、他の女子社員たちが、ぞろぞろと財布を持って立ち上がる。
「あーちょっと待って、これだけやったら」
あとひとつだけ、どうしても午前中に入れておきたいデータがあって、半分腰を浮かしながら打ち込みをしていた私。
そんな私を後ろから主任の声が呼び止めた。
「美村」
「はい」
「ちょっと、いいか」
「あ、はい」
私はパソコンのエンターキーを押して、ちらりと主任を見て、女子社員に向きなおった。
「ごめ~ん、洋ちゃん先行ってて。あとで行く」
でも、それを
「いや、原西、美村は今日は行かない。悪いな」
と主任の声がさえぎった。
「え?」
「え?」
洋ちゃんと、私の声が重なった。
「美村は居残り。えさはこっちで用意するから」
「え、えさぁ!?」
主任の発言に驚きながら、洋ちゃんを見ると、洋ちゃんも目を丸くしていた。
そして私たち二人を交互に見た後「どうも、お邪魔しましたぁ~」なんて言いながら、事務所を出て行った。
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