珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第3章 誤解のはじまり
「あんたこそ、うちよりサキちゃんち行きなさいよ」
「サキんち、実家だもん。そうそう泊まれませんて」
春樹には同じ大学の彼女がいる。
高校時代から、なぜか春樹は彼女が絶えない。
それにくらべて、私は……。
「奈緒はさ、理想が高すぎるんだって。奈緒のこといいって言ってくれるヤツ、いないわけじゃないじゃん。自分のこと好きって言ってくれるヤツはことごとくダメで、そして、自分のほうを向いてない男ばっか追いかけるんだよな」
私も、缶ビールのタブを立てて、テーブルのそばにペタンと座る。
「だって、私のこと好きって言われても、私はその人のこと好きじゃないんだもん」
っていうか、春樹はなんで一番いいクッションの席にどかんと座っているのか。
ここは私の部屋で、そこは私の特等席……。
「付き合ってみなくちゃ好きになるかならないか、わかんねぇじゃん。ダメなら別れればいいし」
ビールに口をつけて思った。
春樹に彼女が耐えないのは、もしかして、告白された人みんなと、とりあえず付き合ってみてるからなのではないかと。
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