珈琲ゼリー ~ほろ苦オフィスラブ~
第7章 本当の気持ち
終業のチャイムが鳴る。
今日の服は、藍色のヒラヒラしたチュニックに、白のパンツ。
シルバーの三連ネックレスと、ハート型の腕時計。
急いで着替えて、トイレに移動。口紅を塗りなおして、髪をサイドでクルクルとまとめあげる。
どんな状況でも、主任と会うときは、一番かわいい自分でいたい。
たとえ、このデート(なのかどうかわからないけれど)が最後になっても。
「あれ?美村さん」
トイレから出てきた廊下で、後ろから男の人の声が響いた。
振り返ると、同期の東田くんが、スーツ姿で立っていた。
「東田くん」
東田くんは、かっこいいというより、かわいい感じの男の人だ。
入社したての頃は、よく同期のみんなで飲みに行ったりしていた。
「美村さんの私服姿、なんかかわいいね」
「え、ホント?ありがとう」
褒められて、私は改めて自分の格好を見下ろした。
素直に嬉しくなる。
主任も、そう思ってくれるだろうか。
「美村さんは、もう帰り?」
「うん」
「そう」
私はそわそわと出口に視線をむけた。
人がまばらなホール。
無人になった受付。
主任、待ってないかな。
でも、私がオフィスを出るとき、まだ仕事していたから、今頃着替えてるころかな。
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