愛のカケラ
第1章 『不幸はある日突然に・・・』
-検査結果当日-
その日は朝からどんよりとした雲が空を覆っていた。
いつもなんだが、こういう日は決まって心も曇り模様。
マイナス思考に陥りやすい。
「文哉 用意できたわよ・・・」
俺の心を見透かしているのか
・・・香織の声が現実に引き戻す。
「今日はいつもより用意が早いね」
「家の事は昨日の夜に全部片付けたからね
私の事だけするんなら早いのよ。」
そう言うと香織は
どうよ・・・と言わんばかりに胸を張る。
いつもそうしてくれるとコチラは、
おおいに助かるのだが・・・
2人で病院に着くと、
いつもとは違う別室に案内された。
「ただいま 先生は検診中のため
しばらくこちらでお待ちください」
そう言って、看護師さんが部屋から出て行った。
「ねえ 文哉 ここってドラマで出てきそうな部屋じゃない?」
香織が言うまでもなく、俺が一番ビックリしている。
普通に検査結果を伝えるのに、わざわざ別室に連れてくるとは・・・
そんなことを考えると余計に気が滅入る。
「すみませんお待たせしまして 五十嵐さんですね?」
そう言って医師が入ってきた。
「はい 五十嵐です。先日の結果を聞きに来るよう言われたんですが・・・」
緊張からか最後は消え入りそうな声になっていた
「ええ それでそちらは奥様?」
「はい 妻です。」
俺たち二人の顔を見渡してから、静かに語り始めた。
「まず 先日の再検査なんですが、ご主人の健康診断の結果で
ガンの疑いがあったものですから、再検査でそれを確認しました。」
「ガン? えっ先生 ガンって・・・ガンなんですか?」
思いもかけない医師の言葉に、頭の中が混乱しつつ
再度確認の言葉を投げかけた。
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