22歳の高校生活
第1章 派遣社員の憂鬱
小さなビルの最上階。カツカツと足音が響く廊下を通って、オフホワイトのスーツに身を包んだ私は、ベージュのマニキュアを施した手で、「社長室」と書かれたドアをノックした。
中途半端に高そうな調度品が置いてあるその部屋に入ると、その奥にある大きなデスクまで進み、どっしりと座る年配の男性に深々と礼をする。
「社長、短い間ですが、お世話になりました」
きっちり斜め45度に上半身を倒した私は、体を起こすと、メガネを直してにっこりと微笑んだ。
:: 派遣社員の憂鬱 ::
私、梶 逢子は22歳。今日までこの会社の社長秘書だった。
叔母さんの経営する派遣会社から派遣された、一年間の契約秘書。
はじめのうちは、慣れないヒールや、安っぽく見えないスーツを新調するのにいろいろ苦労をしたものだけれど、最近やっと板についてきたところだった。
『ごめんね、キミみたいな可愛い子、本当は契約を更新したいんだけど、この不景気でね。うちも厳しいんだよ』
私の横まで歩いてきた社長は、申し訳なさそうに言って、そして私の背中に手を回してきた。
「いいえ、とんでもないですわ。一年間、本当にありがとうございました」
私は、さりげなく後ろに下がって、その手をやんわりと外した。
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