羊
第3章 失意の中で
「ちょっと散歩行ってくるわ」
財布の中を見ると千円札が二枚あったのでいつものガード下の飲み屋に向かった。
一時からやっている店は、まだ二時を回ったばかりだったが満員の一歩手前の賑わいを見せていた。
十二月の下旬並の寒さになると気象庁が予想していた通りの寒さになった中を二十分ペダルを漕ぎ体が冷え切っていたので、ビールはパスして二合の熱燗と、おでんの厚揚げと大根を頼んだ。
途中のコンビニで煙草を買ったついでにとってきた無料のアルバイト専門の求人誌を開く。
一カ月間だけの仕事などは皆無で、短期と言えば、やはり、仲介業者に登録して仕事を紹介してもらうものばかりだった。
熱燗を流し込む。
ポッと胃の中で熱の花が開く。
“マンガ喫茶
18歳〜35歳位まで
22:00〜5:00
時給950円
週3、4日勤務できる方
短期可”
「ちょっと電話してくるんで」
通りがかった店員に声を掛ける。
〈ありがとうございます。
マンガ喫茶ポエム、谷崎でございます〉
「あのう、求人誌見て電話させてもらったんですけど、三十八歳なんですけど大丈夫ですか?」
〈はい、大丈夫です。
失礼ですけど、今何かお仕事のほうは?〉
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