羊

完結
発行者:シュール
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/09/05
最終更新日:---

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第3章 失意の中で
「うーん、できたら避けたいですね」
「そうですか。
 で、山田さん、この大阪のご自宅は賃貸ですか、分譲ですか?」
「分譲です」
「お子さんは?」
「娘が一人います。小学校二年生です」
「山田さんねえ・・」
 社長はもう一度湯飲みに口をつけた。
「ご家族皆さんで向こうへ移るっていうのは?」
「ちょっと無理ですね。
 娘の学校の問題もありますし、どうしてもとなったら単身赴任ですね」
「そうですか・・・いえ、山田さんねえ、やっぱり関西、特に大阪はかなり冷え込んでいるんですよ。
 せいぜい、三重が少しましなくらいで、今一番元気な名古屋か、それかやっぱり関東へ行かないとダメなんですよね。
 うちもこうやって大阪に事務所を構えているんですけど、正直仕事はさっぱりなんですよ。ですから、できれば栃木のほうでやってもらえないかなと思っているんですけど・・」
 ここで、じゃあ頑張らせていただきます、といえば採用が決まっていただろう。
「単身赴任もいいんですけど、子供さんもまだ小さいし、まだまだ、お可愛いでしょ?
 違う土地に行って新しい仕事を始めるとなると色々とご苦労があると思うんですよ。
 そんなときにそばにご家族の方がいるのといないのとでは違うと思うんですよね。
 だから、もし行ってもらうとなるとご家族皆さんで行ってもらいたいんですよ」
 言うと社長はうーんという顔をして俺の履歴書と職務経歴書を睨み付けた。
「山田さん、営業にこだわらずに、総務だとか人事とかでもかまわない?」
「はい、経験は少ししかありませんけど」
 もう一度社長はうーんと唸った。
「やっぱりね、山田さん、大阪に固執すると難しいですよ。うん、難しい」
 最後は自分に言い聞かせるようにして社長は言った。

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