羊

完結
発行者:シュール
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/09/05
最終更新日:---

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第3章 失意の中で
同じ年くらいの男性がOHPを使いながら、たどたどしく会社概要を説明する。
「昨日の夕方、いきなり、明日大阪へ行って会社説明会で喋ってくれって言われましたので、一部お聞き苦しいところがあると思いますがご了承ください」と言って緊張した空気を解きほぐしてくれたその男性は、辞めた会社の同期入社だった竹井を思い出させた。
“竹井”は、三年前に会社が倒産したことを少し苦笑いを浮かべながら説明し、その後かなりの苦労の後、アメリカの融資会社の支援を受けてなんとか会社として復活することができたと述べ、会社概要の説明が終わると具体的にどんな仕事をしてもらうのかを説明し、最後に「私入社以来ずっと人事畑を歩いてきて営業活動はやったことが無いんですけど、やりがいはかなりある仕事だと思います」と結んだ。
 簡単なアンケート用紙を配られ記入していると“竹井”が「もし本日面接をご希望される方がいらっしゃいましたらこの後受付させていただきます。但し、誠に申し訳ありませんが、本日私を含めまして担当させて頂く人間が二人しかおりません。それに、人使いのかなり荒い会社でして、今日中に必ず東京の社のほうに戻ってこいと言われている関係」会場に笑いが起きる。「今二時を回ったとこですから、そうですねえ、六時ののぞみには乗りたいと思いますので、あ、すいません、細かいこと言って」また笑いが起きる。「五時までとして三時間、お一人三十分として六名の二人いるから十二名、そう、誠に申し訳ありませんが、十二名の方のみ本日面接をさせていただきます。但し、来週のこの時間に二回目の説明会をここで行ないます。今度は社長とまでは言いませんが、いる人間をとにかく引っ張り出してきますので」またまた笑いが起きる。「どうしても今日でないと都合が悪い、妻が来週出産予定日なんです、と言う人以外はできましたら来週でお願いします」
 皆笑ったが、俺は笑わなかった。
 通るかどうかも分からない会社を受けるのに、往復四百六十円も掛けてまた同じところになんか来たくもなかった。
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