羊
第1章 俺様・・・ハローワークにて
一枚は手書きの書面で森中さんの挨拶と条件に見合った会社が見つかりましたのでご検討願いますと言う内容で、もう一枚はその会社の求人票だった。
従業員五十人、資本金一億円、年商五十億円、年収四百五十万〜五百万、年間休日百五日、組合なし。
「申し込むだけ申し込んどいたら」
「うーん、この程度の会社じゃなあ・・」
「やっぱりその程度の会社しかないんやて」
「アホか。
もう一人の担当の人は俺くらいの経歴やったらなんぼでもええとこあるわって言うてたわ」
「お世辞やんか。
向こうからしたらあんたは一応お客さんやねんから。
お客さんに向かって、あんたこれやったらどこも決まりませんわって言わへんやろ。」
次の日、また森中さんからファックスが来た。
辞めた会社で昔担当していた、町の小さな問屋だった。
「ええん違うの。
社員の人も知ってる人ばっかりやし、どんな仕事してんのかもわかってんねんから」
「下手に知ってるから嫌やねん。
まあ、社長で迎えてくれるんやったら考えてもええけどな」
森中さんに断わりの返事を入れようかどうか迷ったが、向こうから何か言ってくるまで待とうと思い、辞めた。
結局、この日以降、?ケプトンからは一切連絡が来なくなった。
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