羊

完結
発行者:シュール
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/09/05
最終更新日:---

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第1章 俺様・・・ハローワークにて
雇用保険なんか恵んでもらうほど俺は情けない人間じゃないよ、と心の中で捨て台詞を吐いてハローワークを出た。

 約束の時間より十分早く到着すると、「あいにくまだ高木は会議中でして」といって五十歳くらいの女性が温かい緑茶を出してくれた。
 夕方の五時と言えば、辞めた会社なんかは電話が鳴り響きフロアー全体が騒然としていたものだったが、高木さんがT大学を卒業して昔の大蔵省で勤めた後天下った財団法人のフロアーは、正しく“静かな週末の午後”だった。
「すいません、お待たせしまして」
 高木さんは、両脇にたくさんの資料を抱え、五時ちょうどに俺の目の前に姿を現した。
「K大学の経営学部ですか、何人か私の友達にもいるんですよ」
 初対面の高木さんは、思っていたより年配だったが、グレーのスーツを品良く着こなし、とにかく背筋がすーっと伸びていた。
「前の会社はどうしてお辞めになったんですか?」
「まあ、いろんなことが重なったんですけど、元もと仕事にやりがいを感じてなかったのと、会社が合併しまして、事実上吸収されたんですけど、上にどんどん人が入ってきて、あっち行けこっち行けって飛ばされるようになって、こら完全に飼い殺しにされるなあ、辞めるんやったら四十なるまでに辞めんと次の会社探すのに苦労するなぁと思いまして思い切って辞めました」
 この時俺は、転職するのに支障がない年齢のリミットを四十歳だと考えていた。
「前の会社ではどれくらいお給料もらっていました?」
「年収で六百五十万円くらいです」
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