羊

完結
発行者:シュール
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/09/05
最終更新日:---

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第1章 俺様・・・ハローワークにて
封筒までも粉々に千切ってごみ箱に放り込むと、「おい、ちょっと飲みに行くから金くれ」と妻に言った。
「そんなお金無いよ」
 妻はつっけんどんに返してきた。
「あほかっ、まだ退職金残ってるやろっ」
「残ってるけど、もう百万円使ってんで。
 家のローンもあるし、健康保険かって前よりだいぶ高なってんねんから。あんた知らんと思うけど」
「ちょっとくらいええやんけ。
 その退職金かって、俺が働いてもらったもんやねんから、二、三十万くれたってええやないか。
 煙草買うから三百円くれ、ビール買うから二百円くれ言うておまえの財布から小銭抜いていくのもうなんか情けないんや」
「しゃあないやん、あんたが選んだ道やねんから」
 なにっ、と大声を上げようとしたとき「これだけやで」と言って妻は千円札三枚を俺の前に差し出した。
 つまらないことで喧嘩をするのは嫌だったので、三枚の千円札を分捕ると、自転車のキーをGパンのポケットに入れ、家を出た。

“ビンビール(大)三九〇円”に魅かれて入ったガード下の立ち飲みに毛が生えた程度の居酒屋は、夕方の四時を回ったばかりにもかかわらず、カウンター席を数席残して人で埋めつくされていた。
 注文を取りにきた“研修生”と書かれたバッジを胸につけた二十歳くらいの女の子にとりあえずビンビールを頼んだ。
 長年酒を飲んでいるが、ラーメン屋に入ってギョウザをあてに一人ビールを飲んだことはあったが、居酒屋に一人で入るのは生まれて初めてだった。
 何か落ち着かない気持ちでメニューを見ていると値段の安さに驚いてしまった。
“冷奴 一五〇円 出し巻き 二〇〇円 
 まぐろお造り 三〇〇円 ・・・・”
 ビールを持ってきた女の子に冷奴とまぐろのお造りを注文した。
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